脊髄損傷とiPS細胞の再生医療について
今回は脊髄損傷とiPS細胞を使った再生医療についてNewtonという雑誌から抜粋していきます。
自身が車椅子のため車いすの方向けの気になる部分のみ抜粋していきます。
脊髄損傷は治るのか?
最初にお答えしておくと、現状の研究段階では時間の経過によって治療が違うようです。
現在臨床研究が進んでいるのは、損傷後2~4週間の患者にiPSの移植手術を行っています。
慢性期の患者では現状細胞移植単独ではよくはなりません。
そのため、リハビリテーションを含めた治療法を開発しているようです。脊髄損傷でのリハビリテーションでの治療法としてはHALというロボットスーツを使ったリハビリが有名です。
以前にも記事で書いていますので、気になる方は読んでみてください。
このように治療法はまだ確立はしていません。
治療効果、回復がどのような因果関係があるのか現在でも研究中のためはっきりとこれが有効!!というのも模索中のようです。
ロボットスーツHALを使ったリハビリ
先程お話ししたロボットスーツと再生医療について少し触れておきます。
私もロボットスーツを使った臨床治験に参加したことがありますが、「装着すればすぐに歩ける!!」といううようなものではありません。
自分の体の動かし方を考えてイメージして体の動かさないといけません。以下のイメージは簡潔に書いてありますが、かなり体力的にも大変です。
出典:Newton(ニュートン)
また、まだ子ども用のロボットスーツはないようなので小児用のロボットスーツも今後は出てくると考えています。
iPS細胞の移植の仕方とは?
損傷部位によって違ってきますが、脊髄損傷の場合の移植についてお答えします。
損傷する部位で多いのは頚髄(首のあたり)あるいは胸髄(胸のあたり)です。
移植手術の際、患者サンはうつ伏せです。背中から切開していって、椎弓(ついきゅう)という背骨の一部分をいったん除きます。神経損傷部を視野のど真ん中において、そこに細胞を移植し、背骨を再建します。
このように損傷部位に対しての移植手術が主であります。
iPS細胞とがん細胞について
iPS細胞とがん細胞には密接な関わりがあるようです。
そのためiPS細胞では移植後にがん化してしまわないように作成しているようです。
Amazonのレビューに書いてあったことが印象的だったので引用したいと思います。
=ガン細胞とES細胞の共通点=
実は、ES細胞にそっくりの特徴を持つもう一つの細胞を、私たちはずっと昔から知っていた。ガン細胞である。ガン細胞はいったんは分化を果たして、生体内での自分の天命を知った細胞である。身体の一部として、その役割を果たしてきた。ところが、偶然が重なって、分化の過程を逆戻りし、未分化段階に戻ってしまった。それでいて分裂と増殖をやめることがない。
このような暴走細胞が身体のさまざまな場所に散らばり、他の細胞の秩序を攪乱(かくらん)するのが、とりもなおさずガンの正体である。 自分の分際(ぶんざい)を見失って、しかし無限に増殖することはやめない細胞。
この点において、ガン細胞はES細胞と極めて似通った、おそらくは表裏一体の関係にある。私たちがもし、ガン細胞に再び正気を取り戻させ、人体組織の一部に分化することを思い出させることができたなら、私たちはガンを制御することができるはずである。
しかし、長年の研究を経ても、未(いま)だガン細胞に再び「空気を読ませる」ことに誰も成功していない。おそらく、現段階では、私たちはガン細胞を制御するのとほとんど同じ程度にしか、ES細胞やiPS細胞を制御できないだろう。それは分化をコントロールすることに関して、同じ科学と同じ技術を必要とするからである。つまり過去、何度も何度も喧伝されたガン征圧の勇ましいプロミスが「果たされた」のと同じ程度にしか、再生医療へのバラ色のプロミスも果たされることはないだろう。私にはそう思える。」
この方の考え方を正とするのではあれば、iPS細胞の研究とはがん研究と同じことではないのかと考えている。
ただ、一点自分の考え方と違うのは人間は克服する生き物であると考えている点ぐらいかな。
再生医療が現段階では期待値が大きいが、まだ現在では実用性は発展途上という段階と考えている。
発展していけば、おそらく人間の構造の本質に近づくことになるのであろう。
それは、いいことも悪いことも今後増えていくことであるけれども。
あとがき
今回はNewtonからいろいろなことを考える機会があった。
現状の研究段階を知って、過大に評価して落ち込むことがないようにしておきたい。
人間は理想とかけ離れた現実を知るときが結構落ち込みやすいので。
そういう意味でもいろいろ知れてよかったと思える。
特にがんとiPSの関係性など。